一般の方々へ

本学会の「医療の質向上プロジェクト」

このホームページの冒頭に掲げていますように、本学会は、人類愛と高い倫理性そして国際的視野を持ち、心臓血管外科領域における質の高い医療による人々の健康と福祉の増進を目指し、患者とともに歩むことを学会理念としています。医療安全はすべての国民の重要な関心事であることから、医療の質向上のための努力は最も尊いプロフェッショナル・オートノミー(職業的自立性)と認識しています。

そのことを実践するための学会としての具体的行動を、「医療の質向上プロジェクト」として推進しています。データベース・医療の質委員会が中心となり、日本心臓血管外科手術データベース機構と連携し、NCD(National Clinical Database)に登録された大規模データの科学的・客観的解析を基にし、医療の質向上プロジェクトに賛同する施設との協働作業として取り組んでいます。具体的には、1)学会アドバイザーが施設を訪問し施設管理者の許可のもとカルテ等を参照し、医療の質向上の具体的方策について院内合同カンファランンスを行い、施設責任者に対してカンファレンス内容をまとめた報告書を送付するOn-site Advisor Conferenceと、2)Web 上で施設責任者と学会アドバイザーが手術経過などを共有し検討の上、医療の質改善に向けた目標と方法を設定することなどを行っています。今後は、1)心臓血管外科専門医認定機構および各認定修練施設の修練責任者と協働し、我が国の心臓血管外科施設が標準的治療を行い認定修練施設としてふさわしい医療の質を維持するための施策を講じること、さらには、2)部長職にある学会員の依頼に応じて、認定修練施設に限らず学会員が在籍するすべての施設に医療の質向上支援事業を行うことを検討しています。

上記のデータベースに基づいたプロジェクトを実践する以前より、幅広い社会活動の一環として、心臓血管外科領域における医療の質向上のための活動を行ってきました。全国の心臓血管外科施設での診療の結果として残念ながら死亡に至った症例や重大後遺症が残る合併症を発症した症例に関して、それが予期されたものであるか否かにかかわらず、死亡や合併症の原因が必ずしも明確ではないと思われた場合、施設管理者からのご依頼があれば、本学会から専門員を派遣し、知り得た一切の個人情報及び診療情報について守秘義務を負いながら、死亡や合併症の原因解明と再発防止及び診療改善のための提言を行うことで協力してきました。今後もそのような学会会員の施設からの要望に応えるような医療の質向上のための活動を継続することで、より安全な心臓血管外科医療を国民の皆様に提供できるよう努めてまいります。