特別座談会
国立京都国際会館
福島県立医科大学 心臓血管外科 教授
弘前大学医学部 心臓血管外科 教授
東海大学八王子病院 心臓血管外科 助教
佐賀大学医学部 胸部・心臓血管外科 助教
東京医科歯科大学 心臓血管外科 助教
秋田大学医学部 心臓血管外科 医員
日本心臓血管外科学会U-40は2014年2月に日本心臓血管外科学会主導で発足しました。「患者」「メディカルスタッフ」「心臓血管外科医」の3つの笑顔の実現に貢献することを理念としており、日本心臓血管外科学会はU-40を通じて、若手会員の意見集約、若手同士の交流を促進し、知識・技術の獲得の機会を提供しています。今回はそんな「日本心臓血管外科学会U-40の未来を考える」をテーマに座談会を行いました。発足してからU-40が築き上げたつながりやメリット、またU-40から心臓血管外科学会への意見の発信などに焦点を当てることで、U-40の未来の姿が見えてきました。
U-40は、上田裕一前理事長の発案で、若手の意見を聞く場として立ち上げました。 このような学会の方向性は、部長の先生や大学の教授、評議員、理事が集まって理事会で決めます。なので、若手の意見を吸い上げる場というのが殆どなかったんです。理事会や評議会で「若手はどう考えているのか」ということが話題に上っても、「まぁこんな感じじゃないか」と。生の声が吸い上げられていなかったんですね。そこでU-40を立ち上げて、全国のいろんな若手に入ってもらい、今後の学会のあり方や心臓血管外科医療を将来どうしたいかの意見を言える場を設けました。10年後、20年後活躍する世代に、自分はこういうビジョンを持っているとか、学会にこうしてほしいという意見を出してもらい、理事会で吸い上げて学会の方向性を決めていきたいというのが狙いです。そういう事が理事会で認められ、北海道から九州までの7地区からそれぞれU-40の代表を出していただきました。そして、統括的に代表を決定してもらうという形で、最初の担当の理事は三重大学の新保教授にお願いしました。新保先生の時代に原型を作っていただき、その後に担当理事になった徳島大学の北川先生に軌道にのせていただいて、3代目の理事である福田先生に今、大発展にむけて大変頑張っていただいている。そういう状況だと思います。
では、担当理事の福田先生から、U-40は具体的にどういった構成でどういった活動をしているのかご説明して頂けますか。
U-40は日本心臓血管外科学会の若手会員の中から、特に40歳以下の先生たちが中心になって活動しています。目標は『「患者」「メディカルスタッフ」「心臓血管外科医」の3つの笑顔の実現に貢献すること』。僕は、この目標がU-40の一番良いところだと思っています。 他の学会にはない特徴として、『ベーシックレクチャーコース』があります。全国の8つの支部で、若手が座学で知識を共有していくという事と、基本的な心臓血管外科手術を教えあう試みです。 そのうえで、より上級の人たちのテクニックを磨く『アドバンスコース』があります。年に一回、冠動脈バイパスのコンピテーション、コンテストをやっており、その他にも広報などでお互いの情報共有をしています。 また、学術総会の時に特別企画をやって、U-40が若い人の将来像をディスカッションしたり、あるいは若手が先輩達からの意見を聞いたりしています。横の関係だけではなく、縦の関係も繋ぎながら運営しているという点が非常にユニークだと思います。
ありがとうございます。そのレクチャーコースで行えるオフザジョブトレーニングで、若手の心臓外科医のトレーニングにおける意義を理事長からご説明願います。
いろんな要因があると思うんですが、理由の一つに専門医制度の改変期があります。 これまでは、例えば専門医を何年で取らなければいけないという決まりごとがありませんでした。心臓血管外科はどうしても修練が長いので、実際専門医取ってみたら40歳近くなっていたという事があるんですよね。それではいけないという事で、専門医の習得期間が短くなるような働きかけがはじまりました。僕らもできるだけ短い期間で効率的にトレーニングを積んで、良い外科医になってほしい。その為には、「手術にたくさん入って修練して上手になりましょう」というオンザジョブトレーニングでは非常に時間がかかると同時に、病院のやり方や、指導員の流儀などバイアスが掛かるんですよね。また、どういう症例が来るかはコントロールできないので、経験にばらつきができる。これを僕らは「偶発的経験」と言っているんだけど、偶発的経験だけではなく「計画的な経験」をする事によってトレーニングの効率が非常に高まると考えています。 スポーツや音楽など脳と手を使う業界では、シミュレーショントレーニングが常識になっています。それを是非外科の世界に取り入れたいという事で、心臓血管外科専門医認定機構もオフザジョブトレーニングの導入をはじめました。今はまだ導入期なので、まずは専門医試験を取るまでに30時間という期間を決めて、指導医にも実際の選考医の先生方にもオフザジョブトレーニングに慣れてもらう試みをしています。 また、U-40のレクチャーの中でシミュレーショントレーニングを色々取り入れ、実際に手を動かし、術中こういう事が起きたらどうするかという『クリティカルケースシナリオ』を自分で考えてシミュレーションする。これも一つのオフザジョブトレーニングです。そういうものを色々取り入れ、若手が全国に広めていっている状況を見ると、我々としても非常に心強いし将来楽しみだなと思っています。
それでは、U-40が全国規模で活動する事によって、横のつながりにどういったいい点、悪い点があるのか。また、心臓外科医のキャリア形成にどう活かされているのかという事について、皆さんのご意見を実例含めてお話いただければと思います。
U-40という物が自分たちにとってどのような存在で、自分たちがU-40にいる事で何を得られるか、何を還元できるかという事を色々考えたときに、私には一つ疑問があります。自分たちは将来どの様な道をたどって、どういうキャリアをたどり、どんな風になりたいかというビジョンが、皆が明確じゃなかったり、ゴールが一定じゃない。そういう問題点が見えました。その様な視点から、私たちがU-40に入って、自分たちの将来について考えるようになったというのはすごくメリットなのかなと。縦横のつながりだけでなく、このような座談会や今までの活動などを通しても色々な人の意見を聞いて、自分のキャリアや将来像ついて考えられるようになったのは良かったですね。それを皆で考えられるようになったら、心臓外科のより良い将来につながるかなと思っています。
他の方ご意見ありますか。
U-40の幹事となったメリットとして、今まで普通に診療している中では出会えなかったような同世代の方と会えるというのがあると思います。ただ逆に、幹事以外の人に対してどんなことが提供できるかという部分を今話し合っています。 そもそも若手には、U-40という存在を知らない人もいます。自分たち40歳以下が全員会員なんだという認識がない人もまだ多いです。 今、幹事以外の人に提供できる事としてはまずOffJTでトレーニングの場を提供してあげる事です。そこには幹事以外の人もたくさん集まりますから、幹事ではない人同士の交流の場にもなります。後は、僕らの働き方改革。そのあたりに関しても若手の意見を発信し、幹事以外の人の意見を集約して上の先生方に色々な事を進言出来ればと考えています。
キャリア面では結構影響を受けました。僕が個人的にくじけそうになったりした時、U-40と関わっていたことで、同じような世代と一緒に手を動かし、話す機会がU-40のBLCであり、非常に良い意味でモチベーションを保てました。こんないい会があるんだなと思ったのがU-40に対する第一印象です。これは受講者としてU-40の会員としての気持ちですね。 臨床をやっていく上で、患者さんの状態が良くないときとか、自分のせいで悪くなっちゃったりとか、くじけそうになったりした時「続ける資格あるのかな」とかそんな気持ちになることがあるんですけど、そういう中でもU-40の会員として、仲間がいて、同じような悩みを共有することで、精神的に一人で戦う必要はなく、モチベーションを保てるというのはキャリアにおいては一つ良かったかなと。 この対談の前に藤原先生も言われてましたが、U-40会員のメリットと幹事のメリットは少し違っています。実際幹事になると、全国的に、横断的に仲間が増えてさらに良いつながりが生まれます。医局員どうしでは話せないような内容も、結構深い所まで話せるようになります。本当に悩みを共有できる仲間が増えて、自分のキャリア形成の幅も色々広がっていくなというのが幹事としての印象です。
僕は34歳で今9年目になるんですけど、最初は会員として参加させて貰ったのがすごく記憶に残っています。その時は、まだ飲み会とかに参加する雰囲気ではなくて、横のつながりがありませんでした。最近はU-40で行うBasic Lecture Courseに参加するために皆が集まって、横のつながりを広げようという雰囲気が強くなっているなというのを感じています。 僕自身はキャリアが長いというわけではないので、本当にちょっとした疑問とかが沸いても、近い世代の先輩がいないので声をかけづらいです。日々の診療の中で沸いたいろんな疑問は、U-40東北支部の仲間とラインでやりとりしあったり、会った時に「ちょっとこの手術でこういう事があったんですけど」と相談しています。U-40という横のつながりは、若手が抱える問題や悩みを共有するうえで非常に役に立っています。
僕の年代っておそらく自分の病院とか、自分の組織の中でずっとトレーニングをしていて、他の大学、他の病院の若手とか指導員が何をやっているのか、どんな手術をやっているのかとか、どのくらいうまいんだとか、情報って殆どなかったんだよ。僕らは、施設外の指導者と一緒に手術して指導して貰うっていう経験もゼロだから。君たちの話を聞いて羨ましいなって思うよ。 今は同年代の人たちがスキルを磨く為に一緒に集まって「横で何やってるのか」「あいつ結構うまいな」「うちとは流儀が違うな」とか、そういう事もわかる。U-40のレクチャーの為に、病院の部長先生とかが来て指導してくれるじゃない。これはおそらく一生の財産になるよね。 さっき組織のバイアスとか指導者のバイアスとか流儀の話をしたけど、心臓血管外科の主義って標準化が出来てないんですよね。それで今回の、『いまさら聞けない心臓血管外科』が企画された。あれも最初の趣旨は「何が、どこで、どうやっているんだ」というのを集めて貰って、「原則から考えてこれが一番良いんじゃないか」っていう、最終的な標準主義的な物を作り上げていく。すると色んなバイアスがなくなるし、色んなピットホールや失敗があって、色んな事を学んだりしたのが共有できると皆の財産になるじゃないですか。 だからそういう意味では、U-40のような活動が最後の目標に向かって非常に順調に進んでるなと感じて嬉しく思いました。
こういう交流の形ってなかったですよね、僕らの年代。他の大学、他の病院で何をやっているのかって全然分からないし、ある意味ではお互いにまじりあわないみたいな所があった。今、横のつながりが大学や施設を超えて広がっているというのは、僕らにとってはすごく新しい事で、良い事だと思います。それがまたそれぞれの施設に戻ってきて、指導者にとっても新しいやり方に変えていこうという一つのモチベーションになるので、フィードバックもしているんですよね。指導者も集まってきて「お互いにどうやって指導してるかな」とかをちょっと見たりして。そういう点でも横のつながりだけでなくて、上にも発展していくところだと思うんですよね。 後は、僕らは自分たちのキャリア形成ってとにかく「がんばれ、がんばれ」ばっかりで目標をなかなか考える余裕がなかったんです。先生達もキャリア形成どうしていこうかな、どうしていったらいいのかなって事を悩む所もあると思うんですけど、今は相談できる。僕らは上を見て、背中を見てただついていくだけっていう所がありましたけど、今の人たちは先輩たちや同学年の人たちも見ながら、自分たちの先のキャリアを考えていけるっていうのはすごく良い事だと思いますね。うまく行かなくて悶々としていた時期が僕らもありましたけど、今の若手はお互い悩みも共有できるし、話せる事でずいぶん解決ができる要素ってあるんじゃないですかね。
U-40のメンバー一人一人キャリア形成のプランも違うし、やりたいことも違うし、なおかつ今はロボット手術やMICSなど新しい術式も増えてきて将来の方向性を見るのが難しいなと思います。「自分は血管内治療だけにする」っていう人や「 ロボット手術でやる」っていう人も出てくると思うし。その中で若者もどういうキャリアを積んで行けばいいのか分からないし、将来の心臓外科の状況も分からない。だからこそ横のつながりで、「あの人はこんなに ロボット手術に興味を持っていて、 ロボット手術を将来やる為にここに留学して、それで勉強して将来こういう風にやりたいらしい」とかっていう情報があったり、それによって刺激を多く貰えるのは非常に大事なのかなって思います。
はい、ありがとうございます。それでは、若手の意見を学会運営に反映する点で、U-40の若手の意見をどのように集約して、どのように学会で上に反映できるような形になっているのか、実際どのような要望を出したことがあるかなど、そういった事例があればお話し下さい。
「いまさら聞けない手術手技」の話も、こういう手技をこの地域でしているというのを全国各地のU-40幹事の意見をベースにアンケート形式で集めた内容です。今、私がオブザーバーとして心臓血管外科学会の理事会に出席しているのは 私たち若手の意見をいっぱい吸い上げてくれるという姿勢の現れだと思いますし、私からの意見は幹事みんなの意見を集約したものです。このような働きかけをしていただいている理事会に非常に感謝しておりますし、この機会を大事にするために若手から専門医制度や、働き方改革、集約化などの制度自体に対する意見を言えるまで知識を身に着け、意見を集約して提言できればと考えています。
横山先生いかがですか
理事会に限らず、いろんな場所でU-40の若手と同じ場所、同じ情報を共有して、同じテーマを討論、議論しているというのはこれまでになく、非常に画期的な事です。強烈な意見は今のところないですが、情報共有という意味ではすごく良くできていると思います。先程田中さんが言った、今テーマになっている専門医制度だとか、働き方改革とか、そういうところでは「あの人たちなにやってんだ」っていう齟齬はなくなってきているじゃないかなと思いますね。 僕らが研修医をやっていた時代と比べて、物事の変化のスピードがすごく速くなっていると思うんですよね。U-40とボードメンバーが情報共有して「社会はこっちのほうに行くんじゃないか」「こうなるんじゃないか」と変化に対応してく能力がこれから問われると思うし、明日本当にどうなるか分からない。その時に色んな情報を持って、色んな仲間がいて、ネットワークがあって変わっていけるという能力を身に着けてもらうのは、これから生存していく中ですごく大事な能力になるんじゃないかなと思います。そういう基盤がまずできたという事が一つの到達点だと思います。
僕らは地方大学で、いわゆる年間500-600症例をこなしているハイボリュームセンターの1/3程度の症例が少ない所でがんばっています。そういうところで働く若手たちの意見集約につながれば良いのかなっていう気持ちは持っていますね。 こうして自分の大学外の理事の先生方とお話する機会があったり、理事会に参加して、そこでなにか物が言えたりするっていうのは凄くありがたいなと感じています。
最後に皆さんから、心臓血管外科へ入るかどうか迷っている若手へのメッセージをお願いします。
僕らは今、理事の先生方とはマインドがだいぶ変わってきていると思います。自分の教授もサクセスストーリーを話してくれるんですけど、じゃあ同じ方法論が今通用するかというとそうではないかなと、懐疑的に思ってしまうところもあります。なので、若手の目線から、今心臓血管外科をこういう風に変えていかないといけないとか、十年後を見据えてこういう事をやっていかないといけないとか、色々な思いがあります。自分たちも先が見えない混沌とした中ですけれども、心臓血管外科のやりがいというものは変わりません。やりがいのある科が発展していくように一緒に頑張って行きましょう。
最近非常に仕事が楽しいです。僕は、心臓血管外科学の学生時代、教授のプロフェッショナルな姿が非常にかっこよくて、それに憧れて心臓血管外科に入りました。今は働き方改革で心臓血管外科が凄く忙しいですが、学生さん達が心臓血管外科に興味を持ってもらうには、僕たちが楽しそうにやりがいをもって働いている姿を見せるっていうのが一番効果的かなと思います。僕も仕事楽しくなってきたのは、色々な人の考え方を聞いて「楽しまなくちゃいけないんだな」と気持ちが切り替わったからです。だから、皆が楽しそうにやっていれば自然と若手も入ってくるのかなと思っています。
多分学生さんや一般の方の思ってらっしゃる心臓外科医像って、都会で働く、かっこよくて、凄く大変で、スーパーマンみたいなもので、それに憧れて入ってくる意識高い系の人たちが多く、学生からはそういった人にはなれないと敬遠される部門だと思います。一方、地方大学や地域医療にもそういう人もいますけれど、現場ってそんな人ばかりでもなくて、中小病院の先生が地域医療の最後の砦として泥臭い仕事を一生懸命やっている施設もあり、それにかっこよさを覚えて憧れて入ってくるという人たちも結構いるんですよね。すべての心臓外科医が都会のsuper surgeonみたいにならなくてもいいんだよっていう幅を持たせてあげたいと思っています。地域医療を支えるのも立派な医療ですし。みんな最初は厳しいイメージでやって来るので、肩の力を抜いて、気楽に入って来やすいような環境づくりをしたいなと思っています。
今心臓血管外科を続けて12年目で、ひしひしと思うのは、女医さんがやっぱり少ないという事です。女性が働きやすい環境を実現していかないと、今後、心臓血管外科の外科医の人数としては確保されない世代になってきます。心臓血管外科というのは大変ではあるけれども、自分がなぜ続けているかというと、やりたいし、おもしろいし、続けたいからというただそれだけです。やりたい仕事、続けたい仕事を女性だから出来ないというのはやっぱり、ちょっと変な話だと思いますし、そういうのは改善していっているというのをまず伝えたいと思います。私も女医で、すごく辛いときもありましたが、それは自分の修練の為には必要な時期だったと思っています。ただ、自分が心臓血管外科を続けられないと思う事は全然ありません。今こうやって若手の意見を吸い上げて頂けるような仕組みがあったり、若手の仲間がたくさんいて横のつながり、縦のつながりがあるので、おそらく10年前に女医さんが入るよりは数段入りやすいです。また、入っても楽しく続けられる環境が整いつつあるので、沢山の人に心臓血管外科に興味を持ってもらいたいなと思っています。
福田先生お願いします。
心臓外科、心臓血管外科の一番の大きな魅力は患者さんが凄く元気になることです。それこそ手術前は歩くのもやっと位の人たちが、帰る時には元気に歩いて帰っていくし、退院してからも日常生活レベルがすごく上がります。そういうのを外来で見ていると、やっぱり僕らの仕事っていいなっていう気持ちになります。時に悩んだときには、そのようなことを各々思い起こしてほしい。心臓血管外科医は、患者さんが元気になった時の笑顔が、あるいは心臓手術をしてありがとうって言われるのがものすごく嬉しい事なんですよね。そこの楽しさや、患者さんの命に関わって元気、笑顔が得られるという所が心臓血管外科の最大の魅力だと思います。それを、これから心臓血管外科医を目指す人たちにも、U-40の皆さんから伝えてもらいたいと思います。
じゃあ最後に横山先生お願いします。
外科は、麻酔さえ掛けてもらえば体のどこでもメスで入っていってなんでもできて、なんでも治せるっていう治療学です。心臓外科はまさしく生命に直結するので、外科の中でも究極の外科だと思います。私はそれに魅力を感じて入ったんですけども、今日先生方の話を聞いて、研修医の1年目、2年目に仕事が楽しかったのは、少しずつ仕事を任されて、自分の裁量権が少しずつ大きくなっていったからかなと思いました。例えば最初の頃の手術はあんまり大きな手術ではないかもしれないけれど、術後管理の難しい人に自分の裁量で色んな事をやって少しずつ良くなっていく。それが実感として分かって、それを見て先輩や上司がまた仕事を任せてくれる。患者さんが感謝してくれる。それがものすごく楽しいんです。外科、心臓血管外科には、そういうところが楽しめる人たち入ってきてくれると思うので、実際に働いている若い人たちがこれから外科に入ってくる人たちにその楽しさを伝えられるような環境にしていく必要があるかなという風に感じました。 ちょっと昔の事を忘れかけていましたけど、そういえばあの頃は楽しかったなって思い出しましたので、本当に今日はいい座談会だったと思います。ありがとうございました。
日時:令和元年11月1日
場所:京都国際会議場